2011年3月11日に起きた東日本大震災で外出先の山形県で被災した30代のMさんの体験談をご紹介します。
Mさんは震災当日、自動車教習所の運転免許合宿参加のため山形県におり、教習所で最初の講義を受けていました。
いつ、どんなタイミングで災害に遭うかと言うことは誰にもわかりません。
もしかしたら「自宅から遠く離れた場所で被災する」ということも十分にあり得ます。
遠方での被災は不安になることも多く、何を備えれば良いのでしょうか。
そこで今回は、自動車教習所の免許合宿で滞在した場所で東日本大震災に遭った私の経験をお伝えし、その経験から心がけるようになったことを書いていきます。
東日本大震災で被災した当日の状況について
私が被災したのは、あの有名な2011年3月11日の東日本大震災でした。
最初に、その日の朝から被災するまでを振り返ります。
私は3月11日の朝、自動車の免許合宿に行くため、山形県に向かって新幹線で移動していました。
お昼には到着し、教習所で最初のオリエンテーションを終えて、最初の講義が始まる頃でした。そこで、一瞬何が起きたのかわからないぐらいの揺れを感じ、周りの受講生とともに机の下にもぐりました。
床に固定されていた机だったので、その机の脚につかまっていないと動かされてしまうような揺れでした。
幸い耐震の十分な建物だったため、建物の倒壊はありませんでした。また、後になってわかったことですが、山形県は日本海側に面しており、津波もなかったために建物の倒壊は少ない地域でした。
しかし、直後から停電が始まりました。
その日は安全を優先し、教習は中止となり、宿泊施設に帰ることとなりました。
免許合宿のコース選択の際に食事つきの宿泊施設にしていたことは正解でした。
当日も電気は止まっていましたが、ロウソクを灯して、夕食をとることができました。
しばらくの間は断続的に余震がやってきていました。まだ寒い時期でしたが、暖房もつかないため、布団にもぐって一夜を明かすこととなりました。
免許合宿で慣れない土地に来た初日でしたので、「この先どうなるのだろう…」と感じたことを覚えています。
被災してからの生活
驚くべきことですが、被災した翌日から教習は行われることになりました。
停電は続いていましたが、ガソリンはあるために免許合宿に来てしまった受講生については卒業までいち早く講習が行われることが優先されたのです。
この合宿では大学の同級生の友だち1人とともに受講していました。その友人と会話をすることで、不安な気持ちを共有することができました。
しかし、携帯電話の電池も既に切れており、他の地域がどうなっているのかわからない状況でした。唯一の情報源は、教習所に向かう送迎バスの中で聴くラジオでした。
そして、さらに数日経った頃に教習所で発電機を用意してもらえたため、携帯電話の充電とテレビを見ることができるようになりました。
テレビで津波の様子、福島の原発の事故の様子を初めて見た時には、「とんでもないことになっていた」とようやくわかりました。
また、地元の両親や友人からは具体的にどんな被災状況か十分に伝わっていなかったため、心配の連絡がたくさん入っていました。
その後、電気が復旧してからは徐々に余震も少なくなり、自動車教習が通常の形で進められるようになりました。
私は幸いにもいくつかの理由で落ち着いた生活を送ることができました。
1つには食事つきの宿泊施設に滞在していたことです。また、目の前の自動車教習に集中することで、精神的にも安定した日々を送ることができました。
さらに、教習所や宿泊施設でも新たに友人ができるなど孤独でなかったということも気持ちの面では落ち着いていられたことだと思います。
被災した時に必要だと感じたもの
被災してからの日々を振り返ると、手元にあったら良かったと思えるものもありました。
遠方地ではなかなか備えられないものもありますが、携帯電話・スマートフォンの充電器は持っておいた方が良いと感じます。
当時は今ほど持ち運べる充電器が普及していなかったですが、やはり連絡手段として重要です。
インターネットが繋がるかどうか状況次第ではありますが、情報が手に入らないことは精神的にも不安になるものです。
スマートフォンで情報が手に入るのであれば、充電を何とか残せるようにしたいものです。
インターネットが繋がらない時にはラジオは情報源として頼りになります。そして、情報源であるとともに、
音楽が流れると少しだけ気持ちが和らぐ点も重要でした。
「アンパンマンのマーチ」がよく流れていたのもやはり音楽に元気づけられるという現象が起きていたのだと思います。
また、停電してしまうと明かりと寒さをしのぐことが重要になってきます。やはり懐中電灯とカイロなどは手元にあると安心でした。
遠隔地での被災で心がけるようになったこと
免許合宿での被災経験は、珍しい経験だとは思いますが、遠隔地での被災は不安な気持ちも強いものでした。
かといって、旅行先などに防災グッズや備蓄を持っていくことは現実的には難しいと思います。
では、遠隔地で被災した場合でも心がけると良いことは何でしょうか?
1つには災害が起こった時に、どのように行動するのかという知識を持っておくことだと思います。
基本的なことではありますが、揺れている時はまずは身の安全を確保し、揺れが収まったら安全な場所に避難するということがあります。こういった最低限の知識は知っておきたいものです。
ただ非常事態であれば、知識だけでは対処しきれないこともあります。その際には一人だけで行動しないということも意識すべきでしょう。
知らない人の中で被災したとしても、周囲で声を掛け合って、助け合うことも必要だと思います。
集団の判断が危うい方向に向かうこともあるので注意は必要ですが、困っていることがあれば助け合うという姿勢は平常時以上に必要なことだと思いました。
まとめ
私の山形での被災は、幸いにも自動車の免許合宿に行っていたためにむしろあまり不自由することなく過ごすことができました。
しかし、不自由なく過ごせた裏では、教習所の職員の方や宿泊施設の方々が「遠方から来た受講生に不安な思いをさせまい」と努力していただいたことがたくさんありました。
物理的な助けと言うことももちろんですが、こういった心を向けてもらったことが何より支えになったことでした。
遠隔地での被災は、通常の被災以上に不安な気持ちが強くなるものですので、周りの人と支え合って、精神面でも乗り越えていけるようにしたいものです。