災害時に注意が必要な「認知バイアス」のまとめ

 

災害は突然起きるものであり、普段通りに落ち着いた行動のとれる人は少ないものです。

 

そして非常事態には、人間の持っている「認知バイアス」が働いてしまうために、時に生死を分けることにもなってしまいます。

 

「認知バイアス」は心理学の用語で持っている常識や周りの環境によって人の判断が偏ってしまう傾向のことを指します。災害に備えて、認知バイアスの知識を持っておくことが重要になると言えるでしょう。

 

そこでこの記事では、災害時に影響すると思われる認知バイアスをまとめて紹介します。

 

 

現状維持バイアス

「現状維持バイアス」とは、大きな変化を恐れて現状を維持しようとしてしまう心理的な特性のことです。

 

変化によってもたらされる利益よりも、損失の方を大きく見積もってしまう特性とも言えるでしょう。

 

現状維持バイアスがあることによって、私たちは明らかに危険な選択をとることから回避できます。

 

しかし、たとえば組織の刷新などを大胆に行うことが客観的に見て明らかであったとしても、現状維持バイアスが働くと「現状のやり方の方が慣れている」と考えて変化を避けてしまうということも起こり得ます。

 

 

凍りつき症候群

「凍りつき症候群」とは、突然の事故や災害が起きると逃げる時間があるにもかかわらず、ぼう然として思考がとまってしまうことを言います。

 

これは経験したことのない急激な変化が目の前で起きると人間の脳がそれを処理しきれなくなり、思考停止に陥ってしまうため、身体も凍り付いたように動けなくなってしまうという仕組みです。

 

人間が脳の働きを正常に保つために備わっているメカニズムと言えますが、災害時にはこの凍りつき症候群になる人が80%もいると言われます。

 

 

楽観バイアス

「自分には悪いことは起こらないだろう」と物事を都合よく考えてしまう傾向を「楽観バイアス」と言います。

 

楽観バイアスが備わっていることで、日常生活にある様々なリスクに過剰に反応せず過ごせるのでストレス軽減に役立ちます。

 

一方で、明らかに危険が近づいているような異常事態も楽観的に考えてしまい、そのリスクを見逃してしまう危険性もあります。

 

 

感情バイアス

「感情バイアス」とは、相反する選択肢があった時に自分にとって好ましい感情の湧く方を選んでしまうなど、自分の感情で意思決定を行ってしまう傾向のことを言います。

 

「感情バイアス」は、認知そのもののゆがみである「認知バイアス」と異なるものという考え方もありますが、感情が認知をゆがめてしまうために認知バイアスの一種とも言われます。

 

「感情バイアス」は感情に即した判断は、精神的健康の維持にはプラスになることもあります。しかし、慎重に情報を解釈する場合には誤った判断につながる可能性もあります。

 

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確証バイアス

人は自分が正しいと思う情報ばかりに目が行ってしまいます。

 

人はそれを反証するような情報を無視してしまう傾向があり、それを「確証バイアス」と言います。

 

確証バイアスの根底には、「自らの判断が正しいと思って安心したい」という感情があると言われます。

 

ある情報に合致する事例が1つ見つかっただけで、確証バイアスが働いてその情報が正しいと判断してしまうため、反証するような事例がないかを落ち着いて確認する必要があります。

 

 

感情弱化バイアス

「感情弱化バイアス」とは、不快な感情は心地よい感情よりも忘れやすい傾向のことを言います。

 

楽観バイアスと似ていますが、不快に感じるものを避けようという感情に引っ張られる傾向であることが特徴です。

 

災害を経験している人は、災害のつらい経験を忘れようと感情弱化バイアスにより「すぐに次の災害は起きないだろう」と考えてしまうことがあります。

 

 

オオカミ少年効果

寓話(ぐうわ)のひとつに「オオカミ少年」があります。

 

何度も「オオカミが来た」と少年が嘘を言っていたため、本当にオオカミが来た時に誰も助けに来てくれなかったという話です。

 

ここから、何度も警報が発令され、それに慣れてしまって警報に無反応になってしまうことを「オオカミ少年効果」と言います。

 

人々が警報に対する信頼をなくしてしまうと、実際に災害が起きている時にも警報に無反応になってしまい結果的に逃げ遅れてしまう、などの問題が生じます。

 

 

利用可能性ヒューリスティック

人間の脳は多くの情報を処理しているために、できるだけその負担を軽減しようとします。

 

そこで物事の判断の際に、すぐに利用可能な情報に基づいて判断しようとしてしまうのです。この傾向のことを「利用可能性ヒューリスティック」と言います。

 

素早い判断ができることがメリットですが、一方で記憶違いや認知バイアスによって判断を誤ってしまう危険性があります。

 

 

災害時には認知バイアスがどのように働くのか

 

それぞれの認知バイアスは、日常生活を円滑に送るためには必要なものです。

 

しかし、非常時にはそれが身の安全を守る上では誤った行動につながってしまう場合があり得ます。

 

たとえば緊急地震速報が今ここで鳴り始めたら、どのように人は行動するでしょうか。

 

これまで紹介してきた認知バイアスから考えてみましょう。

 

まず、「オオカミ少年効果」により「また誤報なのではないか」と平然としている人が多いのではないでしょうか。

 

そして「感情弱化バイアス」が働けば、地震が起きることを考えたくないため「本当に大地震が起きることはないだろう」と考えてしまうかもしれません。

 

しかし、もしその直後に、経験したことのない揺れが本当に起きたらどうなるでしょうか。

 

多くの人は「凍りつき症候群」により、すぐに行動がとれずに固まってしまう可能性が高いでしょう。

 

緊急時には、現状を脳が受け入れられないために思考をストップさせてしまうのです。これにより逃げ遅れる人が多数出てきます。

 

頭が働いて状況を飲み込めた人も、冷静な判断ができるでしょうか。

 

「利用可能性ヒューリスティック」で紹介したように、情報を処理しきれないような緊急時には、すぐに活用できそうな情報から判断してしまいます。

 

もしそこで「現状維持バイアス」や「楽観バイアス」が働いてしまうと、「そこまで大事にはならないだろう」と考えて逃げ遅れてしまいます。

 

そのように判断した人が多ければ、それに従う人が出てきて、結果的に大勢が犠牲になると言うこともあり得るでしょう。

 

このように認知バイアスが働くことで、生死を分けるような判断ミスをしてしまう可能性があることに注意が必要なのです。

 

 

まとめ

認知バイアスは、それぞれ人が日常生活を営む上では必要なものです。

 

しかし、ひとたび大きな災害が起きた時には、冷静な判断を妨げるものとして無意識のうちに出てきてしまうため注意が必要です。

 

今回紹介した認知バイアスについての理解を深めておくことで、無意識に働く認知バイアスを意識化することができます。

 

そして普段から避難経路を確認しておくなど、非常時に難しい判断をしなくても済むように備えておくことが重要だと言えるでしょう。

 

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